復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

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水産業の高度化・先進化

復興前期復興後期

課題
① 水産業・水産加工業の新事業の創出をどのように進めるか
② 水産加工業の経営の高度化・多角化をどのように進めるか

東日本大震災における状況と課題

 グローバルな産業の競争が進展する中で、被災地の基幹産業である水産業・水産加工業が持続的な発展・成長を続け、本格的な復興を実現するためには、地域の資源を活用した新商品の開発とあわせ、新技術の導入や水産業復興のための研究開発など、市場の変化に的確に対応した新事業の創出や水産加工業の経営の高度化・多角化が求められた。

東日本大震災における取組

水産業復興のための研究開発(課題①)

 文部科学省では、水産業の復興支援を目的に、被災地域の海洋生態系の調査研究として、東北大学、東京大学大気海洋研究所、海洋研究開発機構が中心となって、2011年度から「東北マリンサイエンス拠点形成事業」を実施してきた。
 具体的には、東北大学は、三陸沿岸南部域の主に女川湾・仙台湾の漁場環境の変化及び生態系の回復のプロセスの解明を、東京大学大気海洋研究所は、大槌湾を拠点として三陸沿岸北部域を中心に生物資源の再生過程の解明を、海洋研究開発機構は、沖合底層における生態系のモニタリングによる環境の変動メカニズムの解明を行ってきた。これらの取組の中で、漁場環境調査や生態系保全調査を通じて、壊滅的な被害を受けた宮城県・岩手県沿岸域の漁業・養殖業における水産技術の開発を行ってきた。
 こうして得られた成果は、データベースの構築やシンポジウムの開催を通じて、水産関連事業者などに発信し、効率的な漁業・養殖業の実施に貢献するとともに、2020年度の事業完了後も、地元との連携による水産業の復興、ひいては関連産業の創出に役立てていくこととしている(1)(2)

最新技術の導入による新たなビジネスモデルの確立(課題①)

 水産物を単純に凍結・解凍すると、細胞が変質することにより、触感や風味等が損なわれてしまうことがあり、とれたての産地鮮度の維持が課題となっている。
 岩手県大船渡市の有限会社三陸とれたて市場では、凍結の過程で進行する変質を最大限に予防できる最新の冷凍技術CAS(Cells Alive System)を導入し、独自のノウハウにより、解凍後ドリップ(魚の細胞の組織液)が出ないなど品質が向上した。これを機に、これまで鮮魚中心だったビジネスモデルから、消費者視点を生かした付加価値の高い冷凍加工品にシフトし、新しいビジネスモデルを展開している(3)(4)

新たなアイデアを取り入れた商品開発による経営革新(課題①②)

 宮城県気仙沼市の水産加工業の株式会社八葉水産では、震災で本社建屋、4つの工場すべてが壊滅的な被害を受けた。2012年3月に工場の一つは復旧できたものの、その間に販路を失い、売上は悪化した。
 再開に当たっては、マーケットを離れていた間の消費者のニーズの変化を踏まえた商品の開発、一次加工を受け持っていた下請工場の閉鎖や品質検査等の管理業務の増加に起因する人材不足への対応が大きな課題となった。そこで、復興庁の復興・創生インターン制度を積極的に活用して学生インターンを受け入れ、学生の新しいアイデアに基づいた商品開発やプロモーションを積極的に展開した。インターン制度の活用によって、マーケットへの変化への的確な対応と人手不足を解消することをめざしている(事例49-1)。

教訓・ノウハウ
① 新技術を導入して付加価値の高い商品を開発し新たなビジネスモデルを創出する

新たな技術を活用して、消費者のニーズに対応した高付加価値商品を開発する。

大学や研究機関の研究開発の成果を活用して生産性の高い漁業・養殖業を推進する。

② 市場の変化に的確に対応して柔軟な発想で経営革新を展開する

消費者ニーズや市場の変化を的確に把握し、自社の個性や強みを活かした経営戦略を構築する。

作業体験などを通して交流を拡大し、地域の水産業を活性化する。

<出典>
(1) 東北大学 マリンサイエンス復興支援室「東北マリンサイエンス拠点形成事業―海洋生態系の調査研究―」
http://www.i-teams.jp/j/index.html

(2) 文部科学省「東北マリンサイエンス拠点委員会」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/010/index.htm

(3) 復興庁「被災地での55の挑戦―企業による復興事業事例集Vol.2―」2014年3月
https://www.reconstruction.go.jp/topics/20140422_hisaichi55vol2_all.pdf

(4) 復興庁「チーム化モデル事例集」2020年3月
https://www.reconstruction.go.jp/portal/sangyou_nariwai/suisan/2019/material/20200622_r1_jireisyu.pdf

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