64)
震災の記録の保存・教訓の発信
応急期復旧期復興前期復興後期
② 震災からの教訓や復興過程をどのように発信するか
東日本大震災における状況と課題
2011年6月に東日本大震災復興構想会議がまとめた「復興への提言~悲惨のなかの希望~」の巻頭に示された復興構想7原則の原則1には「大震災の記録を永遠に残し、広く学術関係者により科学的に分析し、その教訓を次世代に伝承し、国内外に発信する」ことが明記された(1)。同年7月に東日本大震災復興対策本部が決定した「東日本大震災からの復興の基本方針」においても、災害の記録と教訓の収集・保存、デジタル化の推進による誰もがアクセス可能で保存・活用する仕組みの構築と国内外への情報発信がうたわれ、また、地元発意による鎮魂と復興の象徴となる施設の整備を検討するとされた(2)。
東日本大震災における取組
国立国会図書館東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」の構築(課題①②)
国立国会図書館では、総務省と連携して、東日本大震災の記録を国全体で収集・保存・公開するためのポータルサイト「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(愛称:ひなぎく)」を開発し、2013年3月から公開している。「ひなぎく」は、国立国会図書館が収集したコンテンツだけではなく、各地方公共団体や図書館、大学・研究機関、民間団体等が独自に構築しているアーカイブとも連携し、約445万件の文書・ウェブサイト・写真・音声・動画等のデータを検索・閲覧することができる。また、東日本大震災だけではなく、阪神・淡路大震災や熊本地震など他の地震の資料も検索することができる。さらに、他機関のアーカイブ活動が継続困難となった場合には、その記録等を受け継ぐ取組も実施している(事例64-1)。
参加型アーカイブによる震災資料の収集・活用の促進(課題①②)
ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所では、2011年3月から東日本大震災に関する資料の収集を開始し、「日本災害デジタルアーカイブ(Japan Disasters Digital Archive:JDA)」を構築している。JDAでは、東日本大震災を中心に日本の災害に関する資料を広く国内外から収集し、日英2か国語で公開している。また、JDAは参加型のアーカイブであり、利用者自身が収集したウェブサイトや画像、テキスト、映像、音声等のデータをJDAに投稿・共有したり、震災経験者の思いや記憶を「証言・物語」として共有することもできる(3)。
大学によるアーカイブの構築(課題①②)
東北大学災害科学国際研究所では、2011年9月から、産官学の関係機関との連携の下で、「みちのく震録伝」という東日本大震災アーカイブプロジェクトに取り組んでいる。「みちのく震録伝」には、学術的観点から震災に関するあらゆる記憶、記録、事例、知見が映像、画像、音声、テキストなど様々な形式で収集・整理されており、2019年1月現在で約12万点の資料が収録されている。また、宮城県内の防災と観光に関連した情報を4か国語で紹介する防災観光アーカイブのほか、河北新報社の新聞記事・写真や、市民の投稿動画、国際航業の地震発生後の航空写真など企業のアーカイブとも連携を進めている(4)。
被災地方公共団体による震災の記録と教訓の発信(課題②)
岩手県では、2012年2月に「東日本大震災津波に係る災害対応検証報告書」を公表し、その後も2015年1月には「東日本大震災津波を教訓とした防災・復興に関する岩手県からの提言」を発行した。さらに、2020年3月には、復興の取組と教訓を踏まえた提言として「東日本大震災津波からの復興―岩手からの提言―」を発行した(5)。
宮城県では、2011年度から、東日本大震災の概要や発災時における災害対応、明らかになった課題、そこから導かれた教訓などを各種記録誌及び記録映像に取りまとめている。2012年3月の「東日本大震災-宮城県の発災後6か月間の災害対応とその検証」に始まり、2013年3月には「東日本大震災(続編)-宮城県の発災6か月後から半年間の災害対応とその検証-」及び記録映像「東日本大震災~宮城県の記録~」、2015年3月には「東日本大震災-宮城県の発災後1年間の災害対応の記録とその検証-」を発行した。また、東日大震災からの復旧・復興に係る10年間の取組の総括検証も取りまとめられる予定となっている(6)(7)。
福島県においては、2012年10月から「ふくしま復興のあゆみ」を定期的に発行しているほか、2013年3月には「東日本大震災の記録と復興への歩み」、2016年3月には「東日本大震災記録写真集~「あの日」から私たちが歩んできた1827日~」等が発行され、震災からの復旧・復興過程が記録・発信されている(8)。
各市町村においても東日本大震災の記録誌や検証報告書が数多く発行されている。岩手県大槌町は、2019年8月に「東日本大震災記録誌『生きる証』」を発行した。町では、記録誌作成のため助かった職員ら35人に改めて調査を行い、ほぼ実名で当時の様子について記載するなど津波襲来時の状況やその後の復興に向けた取組が詳細に記録されている(9)。
また、青森県・岩手県・宮城県・福島県は、2014年から毎年「東北4県・東日本大震災復興フォーラム」を東京都内で開催し、2015年から東京都も参画している。同フォーラムは、変遷する被災地の復興の現状や課題を総括して、今後に向けた展望を被災地全体で考える場であるとともに、震災の風化防止と復興に対する全国からの幅広い支援の継続を訴える機会となっている(10)。
海外への震災の教訓・復興状況の発信(課題②)
宮城県仙台市では、2015年3月に第3回国連防災世界会議が開催され、「仙台防災枠組2015-2030」が採択された(11)。会議の開催に合わせ、宮城県内では、防災や復興に関するシンポジウムや展示、被災地を訪ねるスタディツアーを実施するなど東日本大震災の経験と教訓を広く発信した(12)。また、2017年からは隔年で世界防災フォーラムが開催されており、「仙台防災枠組2015-2030」の推進と「BOSAI」の主流化を世界に呼びかけている(13)。
岩手県では、2013年度から2015年度にかけて、復興に際し多大な支援を受けた米国、欧州、台湾を一巡し、復興支援に対する感謝や復興への取組状況を伝える復興報告会を実施した。こうした取組により、復興を通して育まれた被災地方公共団体と諸外国の「つながり」が深まり、被災地の復興に対する継続的な支援につながる広報活動となった(14)。
国や地方、大学、民間は、文書や写真、映像等さまざまな形態で残された震災関連資料が散逸しないよう収集・保存する。
被害実態や緊急対応にとどまらず、応急対応や復旧・復興の過程についても、継続的に文書や写真、映像等の記録を収集、保存する。
官民が協力して震災関連資料をアーカイブに集約するとともに、震災の伝承や防災対策・災害研究の進展に向けた活用を促進する。
被災地方公共団体では、フォーラム等の開催により継続的に復興状況を発信するとともに、震災の復旧・復興に係る取組から得られた教訓やノウハウをまとめ、共有する。
被災地に国際会議を誘致したり、諸外国で復興状況を報告する機会を設けたりすることにより、被災地の復興の姿や震災の教訓を国際社会に向けて発信する。
(1) 復興庁.東日本大震災復興構想会議「復興への提言~悲惨のなかの希望~」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/000814.html
(2) 東日本大震災復興対策本部「東日本大震災からの復興の基本方針」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/110811kaitei.pdf
(3) 日本災害デジタルアーカイブ
https://jdarchive.org/en/about/about-archive
(4) 東北大学アーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」
http://www.shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/shinrokuden/
(5) 岩手県「震災記録誌・検証報告書・災害対策マニュアル集」
http://iwate-archive.pref.iwate.jp/wp/?post_type=kenshou
(6) 宮城県「東日本大震災復興検証報告書作成等業務の企画提案について」
(7) 宮城県「東日本大震災の検証・記録に関する宮城県の取組」
https://www.pref.miyagi.jp/site/kt-kiroku/kt-torikumi.html
(8) 福島県「復興関連冊子」
(9) 岩手県大槌町「東日本大震災記録誌 生きる証」2019年8月
(10) 東北4県・東日本大震災復興フォーラム実行委員会「『東北4県・東日本大震災復興フォーラム』の開催について」2013年12月25日記者発表資料
(11) 内閣府防災情報のページ「第3回国連防災世界会議」
http://www.bousai.go.jp/kokusai/kaigi03/index.html
(12) 宮城県「行事予定表」2015年3月16日から2015年3月22日
(13) 世界防災フォーラム
http://www.worldbosaiforum.com/
(14) 岩手県「東日本大震災津波からの復興―岩手からの提言―」p211
https://www.pref.iwate.jp/shinsaifukkou/densho/1027741/index.html