
株式会社伊達重機
【福島県浪江町】重機リースの会社がチャレンジ!
次世代エネルギーの未来を切り開く水素事業
企業情報
- 企業名 株式会社伊達重機
- ヨミガナ カブシキガイシャダテジュウキ
- 業種 物品賃貸業
- 代表者 前司昭博氏[代表取締役]
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所在地
本社:福島県双葉郡浪江町大字酒田字上原18-7
富岡営業所:福島県双葉郡富岡町本岡字王塚670 - TEL 0240-25-8753(富岡営業所)
- WEB https://datejuki.jp/
- 創業年 1985年
- 資本金 1,000万円
- 従業員数 60人
- 売上高 14億8,652万円
企業概要
1985年に創業し、重機、トラックなどの車両のリース事業を展開。東日本大震災当時は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の対応なども行った。ビジネスホテル事業を展開する他、2022年からは水素事業にも本格的に参入。
東京電力福島第一原子力発電所に重機を搬入し、懸命に事故現場対応
浪江町を拠点に、浜通りエリアでクレーンを中心とした重機レンタル事業を展開する株式会社伊達重機。公共、民間を問わずさまざまな工事現場へ重機をレンタルしており、隣町にある東京電力福島第一原子力発電所関連の仕事も元請けの一次下請けという立場で請け負ってきた。
東日本大震災が発生し、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きる。浪江町は避難区域となり全町民が避難を余儀なくされる中、当時専務の前司昭博氏(現社長)は、社長だった父・昭一氏と共に、東京電力福島第一原子力発電所に重機を入れる決断を下す。
「当社では重機のレンタルだけでなく、発電所関連の人たちに向けたビジネスホテルの運営も行っていました。そのため東京電力関連の人たちとは顔見知りでした。日頃からお世話になっている人が困っているというのであれば、地元の企業として何かしなければいけないと思い、賛同してくれた2、3人の社員と共に事故から1週間後に現場へ入りました」。

現場に関する情報も錯綜(さくそう)する中だったが、地元企業としてやれることをやるという使命が行動につながったと振り返る前司氏。作業に対する手当てはあるのか、この先一体どうなってしまうのかという不安は残りながらも、昼夜関係なく対応に当たった。事故対応の拠点となったJヴィレッジと現場を往復する日々が続き、宿泊は車中。全国から応援に来る業者のまとめ役も任されたため、気が休まる時間は全くなかったという。
「被災直後は無我夢中でした。100日以上昼夜問わず休みなく働いても人間は死なないんだなと、後で冗談として話せるくらいになりましたが、今思えば本当に大変な時期でした」(前司氏)。
懸命な対応に取りかかって約1年が経過した時、経済産業省のグループ補助金の採択が決まりビジネスホテル業を再開。除染関連で重機やトラック運送などの仕事も多くなり、売り上げも見込めることがはっきりしたため、経営に関する不安は少しずつ消えていく。
町の水素タウン構想に賛同し、将来を見据えて新規事業に参入
東日本大震災以降、前司氏は多忙を極める中で、地元商工会青年部の活動にも力を入れる。2013年のB-1グランプリで日本一に輝いた「なみえ焼そば」の活動にも参加した。「地域が活性化しなければ、自分の商売も絶対に良くならない。だから自分のことだけを考えていては駄目なんです」と語る前司氏。自分が何かできる立場にあるのであれば、積極的に取り組まなければいけないという考えを持っている。
そんな前司氏が、新しい浪江町の発展のため勉強に励んだのがSDGsだ。所属する青年会議所では、SDGsを日本一推進する団体ということでセミナーや勉強会などを開き、理解を深めた。「重機のレンタル業をしている間は、SDGsに取り組むことは難しかった。いろいろな勉強をしながら何ができるか考えていた時、町の水素タウン構想が持ち上がったんです」。
浪江町は2020年2月にゼロカーボンシティーを表明し、「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」を開所。町の企業に水素事業参加を呼びかけたが、反応は芳しくなかった。前司氏も、他社が水素ステーションを建設するのであれば、参加しないと決めていたという。「地元企業でつぶし合っても仕方がない。地元企業がどこもやらないと分かったので、最終的に手を挙げさせてもらいました」と話す。
SDGsに関する勉強をする中で、近い将来、重機が水素自動車かEV(電気自動車)に切り替わるという情報を把握。パワー不足が懸念されるEVよりも水素自動車に切り替わる確率が高いという話も耳にしていた。「将来を見据えて水素事業に関わることは、会社の発展に必ずつながるという思いも強かった」と、新規事業参入への理由を教えてくれた。




数年後の黒字化を目指し、水素自動車のリースも開始
気候変動による地球温暖化を防ぐ策の一つとして、水素エネルギーは世界的にも注目を集めている。しかし、十分に普及しているというわけではない。全国で164カ所(2023年1月時点)の商用水素ステーションが稼働しているが、設置のない自治体も多く存在する。水素自動車の普及もこれからで、事業の成功には法整備も含めたさまざまな課題が残されている。
水素ステーション建設にかかる費用は約5億円。うち8割は補助金で賄われるが、残り2割は事業者負担になる。「持ち出しの2割分があれば一般的なガソリンスタンドが建設できます。それを考えれば、まだ需要の少ない水素ステーションを運営するのはリスクも大きい」と前司氏。実際、多くの水素ステーションで年間2,000万円以上の赤字が出るという予測もある。それでも前司氏は、3~5年以内には黒字化を達成できると目標を語る。
「水素事業は、2,000万~3,000万円の利益を生むと考えています。たくさんの人に水素自動車の魅力を知ってもらえれば必ず需要は大きくなると思い、トヨタの水素自動車『MIRAI』を50台購入してリースしています。1日1台も車が来ないという水素ステーションも多い中で、当社の水素ステーションには平均8台も来ているんですから、可能性は絶対にあると思います」。
さまざまな点で変化が求められている現代、浪江町も新しい時代に合わせた町に生まれ変わろうとしている。自分が生まれ育ち、そこで働き続けるからこそ、変わろうとする町でできることをやり続けたいと話す前司氏。現在は、電動キックボードのレンタル業にも興味を持ち、勉強しているという。町の活性化が自身の事業の成長にもつながるという前司氏のような考えを持つ経営者が多くなることを願うばかりだ。



・重機のレンタルは東京電力福島第一原子力発電所の事故後も稼働はあったが、その他の事業が滞った。
・水素ステーションの運営だけでは年間2,000万円の赤字が出る予測もある。

・被災から1年後にはグループ補助金でビジネスホテル事業を再開。貨物運送業も除染が活発に行われると、稼働が増えた。
・水素自動車を50台購入して、地域や県内の事業者へリースする事業を開始し、ほぼ全てが貸し出されている。

・昼夜問わず働きながらも手当てがあるか心配もあったが、売り上げを減らすことなく会社を維持できた。
・全国には利用数1日0台という水素ステーションもある中で、浪江水素ステーションは1日平均8台の利用がある。