40)
販路開拓・新事業の立ち上げ
復旧期復興前期復興後期
② 被災地の経済成長を担う起業や新産業創出をどのように促進するか
東日本大震災における状況と課題
被災企業が事業を再開し、生産活動が回復していく中で、持続的な成長を実現するためには、単に震災前の状態に戻すのではなく、消費者ニーズの変化や市場のグローバル化等に的確に対応した新製品や新サービスを開発し、新たな市場を開拓する産業の創造的な復興に取り組むことが必要となった。また、地方公共団体においては、震災からの復旧・復興、さらに持続的な経済成長の実現をめざして、企業における新たなイノベーション(技術革新)の創出や、起業・新産業の創出の促進をどう支援するかが課題となった。
東日本大震災における取組
被災経験をもとに新事業の創出(課題①)
株式会社ワンテーブルは、震災前は北海道で農業をテーマにこども向けの体験学習教室を行っていたが、宮城県に拠点を移し農業関連の事業を手掛けようとした際に震災が発生した。経営者は自ら被災しながら避難所へ物資を供給していたが、乾パンやクッキーなど硬くて水分を必要とする備蓄食に疑問を持った。そこで、被災経験をもとに、常温で製造から5年半備蓄が可能で栄養バランスにも配慮した備蓄食ゼリー「LIFE STOCK」を開発した。さらに、備蓄を可能にした技術を活用し、健康食品や宇宙食の開発など新事業の創出に取り組んでいる(事例40-1)。
大手企業とのマッチングによる新商品の開発(課題①)
復興庁では、被災地域の企業が抱える多様な経営課題の解決を図るため、大手企業等が、技術、情報、販路など、自らの経営資源を幅広く提供する支援事業の形成の場として、震災の翌年度から「地域復興マッチング『結の場』」を実施している。「結の場」は2020年度までに被災3県で28回開催され、436件の連携事業が成立している。
株式会社バンザイ・ファクトリーは、 岩手県盛岡市で設立後、秋田県に工房を移していたが、震災を機に被災地を支援するため、陸前高田市に移転した。同社は、武蔵野美術大学との産学共同により、美しく握りやすい木製のiPhoneケースの開発を進め、2016年に製品化した。さらに、2017年に「結の場」に参加し、富士通株式会社の特許技術を活用したさまざまな香りが楽しめるスマートフォンケースを開発した。この木製のスマートフォンケースは林野庁が支援する「ウッドデザイン賞」を受賞するなど順調に成果を上げた。同社は、自社に不足している技術力やデザイン力を、大学や企業との連携によって補うことで高付加価値商品の開発に取り組んでおり、生産者と大学との協働による商品の品質向上を目指している(事例40-2)。
生産者との協働や大学等との連携による高付加価値化で販路を開拓(課題①)
岩手県釜石市の製麺会社である株式会社川喜は、売上の7割が首都圏向けであったが、震災で物流がストップしている間に販路を奪われ、急激な売上減少となった。販路回復に向け、使用するそば粉を100%岩手県産にするための原料確保と、本来の風味を保ちながら添加物を用いず日持ちする高付加価値商品の開発を目指した。岩手県産そば粉の確保については、震災前からの地元農家との協働で自家栽培に着手することで解決した。添加物を用いず日持ちする生麺の開発は岩手大学や装置開発会社と連携し、そば粉を高温気流で殺菌する製法により商品化に成功した。また、完成した商品は一般社団法人東北経済連合会のマーケティング・知的財産事業化支援事業によってブランディングが図られ、「いわて南部地粉そば」として販売することで、首都圏の多くの高級スーパーや百貨店との取引につながり、順調に販路を回復している(1)。
地方公共団体による東北の経済成長を牽引するスタートアップ企業の育成(課題②)
仙台市は、震災からの地域産業の復旧・復興、さらに技術革新やブランド力の向上などイノベーションによる新たな経済成長をめざして、2014年2月「仙台経済成長デザイン」を策定し、「日本一起業しやすいまち」の実現に向け創業支援に重点的に取り組んでいる。例えば、仙台市起業支援センター「アシ☆スタ」を2014年1月に設立し、ビジネスプラン策定の助言、セミナーの開催、交流サロンなど起業家向けの支援を実施している。また、2019年12月には、東北大学、東北経済連合会、東北経済産業局、七十七銀行などとともに仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会を設立し、革新的なビジネスモデルで成長をめざすスタートアップ企業を産学官に加え地元の金融機関が一体となって支援している(2)(3)。
被災経験等に基づいた課題を発掘し、新事業の立ち上げ等により新たな販路開拓を目指す。
復興支援を行う大手企業等と連携し、自社の技術や強み等を生かした新商品開発を推進する。
震災で失った販路の回復に向け、研究機関等の保有技術を活用し自社製品の課題解決に導く。
地方公共団体が震災復興からの更なる経済成長方針を示し、起業家への支援を強力に進める。
地方公共団体が地域の産業・大学・行政・金融機関と連携し、革新的なビジネスモデルで成長をめざすスタートアップ企業を一体となって支援する。
(1) 復興庁『産業復興創造 東北の経営者たち 私たちが創る』2016年2月
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-1/20160210094116.html
(2) 仙台市「仙台経済成長デザイン」2014年2月
(3) 仙台市「仙台市経済成長戦略2023」2019年3月